アパラチアントレイルの新緑の絨毯2017/05/25 14:49

新緑の絨毯を通ってSilers Bald Shelterに着く
 アパラチアン・トレイルは米国東部のアパラチア山脈を、南のジョージア州から北のメイン州まで貫く延長3500kmのトレイルだ。今回は、その一部、南部のテネシー州とノースカロライナ州の境にまたがるグレートスモーキー山岳国立公園を8泊9日で歩いてきた。
 うち7泊はシェルター、日本風に言えば避難小屋に泊まった。残りの1泊はキャンプサイトにテント泊した。一つ一つのシェルターの定員は12名程度だった。アパラチアン・トレイルを通して歩くスルーハイクの人を除き、シェルターもキャンプサイトも予約が必要だった。予約は1泊目の1ヶ月前から受け付け開始で、7泊まで連続して予約可能だった。7泊を越える予約は一度にはできなかった。今回は2回に分けて日本出発前にインターネットで8泊分全て予約した。1グループの最大は8名と制限されているので、商業的ツアー登山の実施は困難だろうと思った。
 グレートスモーキーは最も標高の高いところでも2025mで、トレイルは、ほとんどが樹林帯を通っていた。出発前に「奥多摩を歩くようだ」と聞いていたが、実際には少し違いがあった。一番の違いは、日本に多い笹が、こちらでは全くなかった点だった。その代わり、林床を覆っていたのは、標高の比較的高いところではイネ科の草、比較的低いところではイネ科以外の草、たとえばエンレイソウなどだった。林床を覆う新緑の絨毯を楽しみながら歩く事ができた。
 歩行時間は1日あたり4時間~5時間半とした。そのおかげで9日間たっぷりと美しい森を楽しみながら歩いた。

米国のバックパック文化2017/05/27 09:57

ベアケーブルに荷物を吊す
 アパラチアントレイルでは、多くのバックパッカーに出会った。一日あたり40~50人と出会った。各シェルター(避難小屋)はだいたい定員の12人で満員になり、外でテントを張ったりハンモックで寝ている人もいた。メイン州まで約6ヶ月かけてスルーハイクする人もいれば、行けるところまで行くセクションハイクの人も多かった。セクションハイクと言っても1ヶ月程度歩く人が多く、我々のように9日間と少ない人はまれだった。
 北向きのメイン州を目指すノースバウンドの人がほとんどで南のジョージア州を目指すサウスバウンドの人は少数だった。我々はサウスバウンドで歩いたので色々な人と出会えた。ただし日本人には会わなかった。日本人には好意的な人が少なからずいて、「君は日本人か?私は横田基地にいたことがある。日本には富士山があるなあ」などと話しかけられた。
 シェルターやテントサイトでは食事と寝る場所が分けられていた。食事はシェルターの外のベンチやかまどの回りで、寝る場所はシェルターの中やテントだった。寝ている間、食料は木と木の間に設置されたベアケーブルに吊すようなっていた。これは食料に熊が引き寄せられるためだ。最初、ベアケーブルの使い方が分からなかったが、15分ほど試行錯誤して、ようやく食料を吊すことができた。
 歩く人は若い20代の人から70代の老人まで様々だった。単独行が多かった。短パン、ノースリーブで歩く人も多く見かけた。山登りのど素人みたいな人も歩いていた。荷物はそれなりの大きさだが、足元は運動靴みたいのを履いている人が多かった。体重が重過ぎるだろうと思われる人も1割以上いて、途中で絶対リタイアするだろうと感じさせる人も少なからずいた。ピークを目指して歩く日本の山歩きとはひと味違ったハイキングだった。

アパラチアントレイルの熊2017/05/30 12:52

木の上の熊の親子
 アパラチアントレイルのグレートスモーキー山岳国立公園ではたくさんの鳥や動物を見た。日本と同様、朝にはたくさんの鳥が鳴いていた。鳥の名前が全く分からないのは残念なところだった。ただウグイスやカラスは鳴いていなかったし、ホトトギスやカッコーもいなかった。小鳥以外には野生の七面鳥を見た。トレイルを歩いていたら、目の前を悠然と七面鳥が歩いて横切ったのには驚いた。
 動物で多くいたのはリスだった。素早く木に駆け上り甲高い声で鳴いていた。時々見たのは鹿だった。日本の鹿より少し太めで小振りのロバと言った感じだった。小屋にいたハイカーは鹿を見つけると喜んでいたので、鹿はそれほど多くないのかも知れない。日本では鹿が多すぎるのか登山者は鹿を見てもこれほどには喜ばないだろう。
 グレートスモーキーでは熊が多いと聞いていたが、見たのは最終日の1回だけだった。すれ違った人に「この先に熊がいる」と言われてから30-40分も歩き、いい加減見落としたかと思った時に、ようやく20mほど横の木の上にいた。ブラックベアと言う熊でグリズリーほどどう猛ではなく、食べ物は横取りしても人を襲う事はほとんどないそうだ。ツキノワグマ程度かと思っていたら、図体は大きく、ヒグマほどもあっただろう。小熊を3匹連れていた。長いこと木の上で休んでいた様子だった。しばらくすると母熊は口を大きく開けガチガチと歯をならし始めた。どうやら回りを威嚇している様子だった。離れているし相手は木の上なので、動物園で熊を見ている雰囲気だったが、相手の方はどうやらあまり良い気分がしなかったらしい。
 思いの外、熊の大きさが大きかったので、昨晩、寝ている間にテントの回りをうろついていた熊の足音を思い出し、良い気持ちはしなかった。